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現場レポート

メモリーサウンドゲーム 2005 授業実践から

佃 文子

 高校へ入学し中学とは違った学習環境の厳しさの中で、1年生の音楽授業では何とか心が解放されて素の自分が表現されればと、イヤー・ゲームの基本である「音の観察」を導入に取り入れ、メモリーサウンドゲーム「私の思い出の音風景」の創作授業へと発展させています。生徒たちにとって自然の中での音観察は、風を肌で感じ、いつも聞いている音を聴くただそれだけのことなのにとても新鮮に受け止めます。初めはなぜこのようなことをするのか半信半疑のようですが、心の解放はこの時から始まっています。聴いた音の擬音表現・図形描写から現代音楽鑑賞(ベリオ・シュットックハウゼン・細川俊夫氏等)と進むうちに、自分と向き合えていくようです。今回は、生徒の創作発表風景と発表後の感想からメモリーサウンドゲームを紹介してみたいと思います。

曲名「お絵描き歌のメロディー」

*初めにおもいでの記を描いているとき、祖母はもういないので少し泣きそうだった。また、一緒にお絵描き歌をしたいと思った。
…(プリントに祖母と二人で絵描き歌をしている絵が描かれています。絵でも文章でも想い出が甦ればよいでしょう。この絵・文がこのテーマの全てのスタートとなっていきます)
*使用音・音具はあたたかく楽しげな音はどんなものか、そのイメージを崩さないようにした。
*曲作りで一番苦労したのはベースのピアノのリズム。一番創意工夫したのは、鈴の音が笑い声を表すように明るく鳴らしたところ。図形楽譜は、単調なリズムなので明るめな配色にしてリズミカルな感じにした。鮮明に思い出された。
*発表時は、あのときの気持ちが再現できるのかすごく不安だった。いざ演奏してみると自然に汗(冷や汗?)は引き、とても懐かしい気分になった。
*作曲はとても難しく感じたけど、音で自分の感情を表すのは意外と楽だった。キレイにしよう、じゃなくてどうすればあの時を表現できるのか、もう戻らない時を音で表現したいと思った。実際に仕上がったのはかなり飾り気ない単調なものだったけど、それだからこそ、本当の懐かしさが出せたと思う。

 この創作活動は私自身も個々の生徒と向き合え、他の音楽表現にも活きていきます。生徒たちは想像力・創造力が広がり、忘れていた自分の原点を思いだし現実の自分と向き合います。そして「音」のかもし出す不思議な力に動かされていきます。本年度も生徒たちの創り出す音世界に感嘆し新たな発見をし、私自身もメモリーサウンドゲームをさらに楽しみながらその奥深さを探究したいと思っております。

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